PBRは目安に過ぎない!?

PBR(株価純資産倍率)とは

PBR(Price to Book Ratio)とは、株価が企業の純資産(簿価)に対してどのくらいの倍率で取引されているかを示す指標です。計算式は次の通りです:

PBR = 株価÷BPS(1株当たり純資産)

PBRが1倍未満であれば、株価が純資産を下回っているため、割安とされることが多いです。逆に、1倍を超えていると株価が純資産以上で取引されており、割高と見なされる場合があります。

この指標を基に、PBRが低い企業を割安と判断して投資するのが「PBR投資」です。しかし、この手法にはいくつかの欠点があります。

PBR投資の欠点

1. 純資産の質に問題がある可能性

PBRは、企業の純資産に基づく指標ですが、企業が保有している資産の価値が実際の市場価値と一致していない場合があります。企業の簿価は、帳簿上の価値であり、市場価値とは異なることが多いのです。

例えば、企業が大量の古い設備や減価償却されていない不動産を保有している場合、その簿価は高いまま残っているかもしれませんが、実際には市場での価値が大幅に下がっている可能性があります。そのため、PBRが低いからといって、その企業が本当に割安であるとは限りません。

2. 成長性を無視した指標である

PBRは企業の資産価値を基に割安かどうかを判断する指標ですが、企業の将来の成長性を反映していません。成長性の高い企業は、資産価値以上の将来のキャッシュフローを生み出す可能性が高いため、PBRが高くても投資価値がある場合があります。

PBRが低い企業に投資する場合、成熟した業界や成長が停滞している企業が含まれることが多く、短期的な値上がりを期待しにくいというリスクがあります。成長性を無視して割安株を選ぶと、パフォーマンスが限定的になる可能性があります。

3. 業界特性による影響

PBRは業界によって適正な値が大きく異なります。例えば、金融業界や不動産業界では、資産価値が重要なためPBRが評価において大きな役割を果たしますが、ITやハイテク業界では、資産よりも知的財産やソフトウェア、ブランド力など無形資産が企業価値を左右することが多いです。

そのため、PBRが低い企業に投資する場合、資産集約型の業界では有効かもしれませんが、技術革新の早い業界では適切な指標とは言えないことがあります。

4. バリュー・トラップのリスク

PBRが低い企業は一見割安に見えますが、「バリュー・トラップ」に陥る可能性があります。バリュー・トラップとは、企業の株価が長期間にわたり割安のまま放置される状態のことです。この場合、株価が上昇するのを待っても、企業のファンダメンタルズが改善しない限り、投資リターンを得ることが難しいです。

特に、経営が低迷している企業や、業界自体が縮小している企業の場合、PBRが低いことは単にその企業や業界の将来性のなさを反映しているに過ぎないこともあります。

5. 負債を考慮していない

PBRは純資産を基に計算されるため、企業の負債状況を十分に反映していません。企業が多額の負債を抱えている場合、PBRが低くても、実際には経営リスクが高く、破綻の可能性が高い場合があります。特に、資本構成や財務健全性を無視してPBRだけに基づいて投資を行うと、企業のリスクを過小評価してしまうことがあります。

PBR投資における正しい考え方

PBR投資を行う際には、いくつかの重要な点を考慮することで、リスクを軽減し、より効果的な投資判断を行うことができます。

1. 資産の質を確認する

PBRが低い企業に投資する前に、その企業が保有する資産の質を確認することが重要です。企業の資産が現実的にどれほどの市場価値を持っているか、またその資産が将来的にどのような収益を生む可能性があるかを検討する必要があります。

2. 成長性と収益力を評価する

PBRだけでなく、成長性や収益力を併せて評価することが重要です。例えば、PBRが低くても、企業の利益成長率やROE(自己資本利益率)が高い場合は、将来的に評価が改善される可能性があります。逆に、成長の見込めない企業に投資しても、リターンが得られない可能性があります。

3. 業界の特性を考慮する

PBRは特定の業界において有効な指標ですが、業界特性を考慮することも必要です。例えば、資産が主な収益源となる業界(不動産、金融など)ではPBRが有効な指標となりますが、無形資産が主な価値を持つ業界(IT、ハイテクなど)では、他の指標と併せて評価することが求められます。

4. 財務状況をチェックする

企業の財務健全性を確認することも欠かせません。負債が過度に多い企業は、低PBRであってもリスクが高く、投資判断には慎重さが必要です。特に、キャッシュフローや負債比率、資本構成をチェックすることで、企業のリスクを評価しましょう。

まとめ

PBR投資は、株価が企業の純資産に対して割安かどうかを判断する一つの方法ですが、その欠点も多く存在します。純資産の質、成長性の欠如、業界特性、バリュー・トラップのリスクなどを十分に理解し、他の指標や分析と組み合わせて判断することが重要です。単純にPBRが低いからといって安易に投資するのではなく、企業の財務状況や将来の成長見込みを慎重に見極める必要があります。

おまけ

 最後に私がPBR投資でまぐれで大きな利益を上げた経験と、その経験からPBR投資を辞めた事例をご紹介します。

 少し昔の話ですが、グレイステクノロジーという会社がありました。その会社は、経営者があまり良い感じではなく、パワハラが凄かったという話がありました。その会社は、毎年素晴らしい右肩上がりの決算を出しており、株価もそれを評価してテンバガーになりました。しかしある日、それが粉飾決算を繰り返していたことが明るみになりました。そのニュースが出た次の日から株価はどんどん下がっていきました。そして、元の株価に戻って(逆テンバガー)となり、株価は底を打ちました。そこで私はこの粉飾決算は解決可能な問題なのではないか?もし、解決可能な問題であった場合、今の株価で買えばまたテンバガーするのではないか?しかし、なんか嫌な感じがしたためその後の発表を待って投資することにしました。そして、それからしばらくして発表された内容が…要約すると「不正が多すぎて手に負えないから上場廃止します」という衝撃的な内容でした、それから株価は急落。59円だった株価が3日で14になり底を打ちました。この時のPBRは0.3倍でした。そして私は考えました。「この株価で全部買い占めて会社を解散させたらすぐに3倍の利益を得られるのではないか?」しかし、当然そんな財力はないため、資産の20%程度で15円の株を買い集めました。それからすぐに株価が急騰して買ってから3日で48円(+200%)になりました。そして私はまた考えました。元々3倍の利益を得るために買っていたのだから、これをホールドしても意味がないのでは?ということで45円で全て売却しました。

そして上場最終日。株価は18円でした。PBRは0.4倍程です。ここに全財産をつぎ込めば2倍は固く取れるのではないだろうか?しかし、当時の私は経験が浅かったため、とりあえず100株だけ買って(1800円)その後どうなるのか観察してみよう。もし、上場廃止後すぐに会社を解散するように機関投資家が動くのであれば今後この方法は使えるかもしれない。ということにしました。

では、その後どうなったか?何度も何度も赤字を出して、社員がどんどんやめていき、会社の資産が減っていって、最終的にはどこかの会社が買収するからという理由で強制的に株を買い上げられました。その時の値段は覚えていませんが、14.2円だったそうです。

PBR0.4倍の株を18円で買ったにもかかわらず、数年ホールドして売却額は14.2円でした。この事例から私はPBRを指標の一つとして捉えることが大事なのだと実感しました。

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